通り過ぎるだけの場所から、人が集い、滞在する広場へ──山形市役所 インタビュー
2025/06/17 山形県山形市
写真左から:コトブキ営業担当 佐藤、山形市 まちづくり政策部 まちづくり政策課 都市計画係 尾形さま 佐々木さま
山形市では、ウォーカブル推進都市として、「居心地が良く歩きたくなるまちなかづくり」を進めています。
その一環として市役所敷地内の広場整備にあたり、景観に調和し、使う人・運用する人双方にとって心地よいストリートファニチャーを導入。選ばれたのは、柔軟なレイアウトが可能な可変型ストリートファニチャーの「COMM」でした。
今回は、山形市 まちづくり政策部 まちづくり政策課 都市計画係 係長 尾形さまに導入の経緯や活用の様子についてお話を伺いました。
人が集う、居心地の良い広場を目指して
Q|今回の広場整備にあたって、どのような課題や狙いがあったのでしょうか?
A| 令和2年3月に山形市は「ウォーカブル推進都市」として認定されました。当初は道路空間の整備が中心でしたが、道路以外の公共空間も積極的に活用していこうという機運が高まり、市役所敷地内の広場も見直すことになりました。
以前までこの広場は通り過ぎるだけの空間で、有効活用されていませんでした。そこで、建物のピロティ部分の心地よい日陰空間を活かし、滞在できる場をつくろうと考えました。
景観と使いやすさを両立するストリートファニチャー
Q|数あるベンチやスツールの中で、COMMに注目されたきっかけは?
A|ウォーカブルの社会実験の事例を調べる中で、「IKEBUKURO LIVING LOOP」でCOMMが活用されているのを見たのがきっかけです。COMMだけではなく、他の事例でもよく見かけるプールサイドにあるような白いPP(ポリプロピレン)の製品も検討しました。管理のしやすさはありますが、街の景観に溶け込むかというとやや違和感を感じました。
一方で、COMMは天然木材を使っており、街中に自然と馴染むデザインだと思いました。
Q|導入の決め手になったポイントがあれば教えてください。
A|景観との調和、使う人にとっての心地よさ、運用する側の利便性などをバランス良く備えていたことが、COMMを選んだ理由です。多くの方に使ってもらうためには、街に自然に馴染むデザイン性も大切だと考えました。
それに、1人〜2人でも簡単に移動・レイアウト変更ができる可変性は大きな決め手でした。イベント時など、広場の使い方に応じて柔軟に対応できる使い勝手の良さが、導入を後押ししました。
COMMが生んだ新しい広場の風景
Q|実際にCOMMを設置してみて、広場に変化はありましたか?
A|以前はただ通り抜けるだけの空間でしたが、COMMを設置したことで朝も昼も人が滞在する場所になりました。
市役所を訪れたお子さま連れの方がここで遊んだり、近隣の幼稚園のお散歩コースの立ち寄り場所になったりと、地域の人たちが自然と集まる場になっています。お昼時にはほぼすべてのCOMMが利用されていて、市役所職員も執務室ではなくここで食事をとり、気分転換やリフレッシュの場として活用しています。
Q|市民や来訪者の反応はどうでしたか?
A|イベントなどでCOMMを一時的に撤去した際に「なくしてしまったんですか?」というお問い合わせをいただくことがありました。便利さがなくなったときに声が届く、つまり「あるのがあたりまえでありがたい存在」になっているのだと感じています。
導入して実感した、COMMの魅力と気づき
Q|実際にCOMMを移動させて使う場面はありますか?
A|広場全体を使うイベント時にはCOMMを端に寄せたり、一時的に撤去したりしています。
移動は少人数で持ち上げるだけでできるので助かっています。同じ形のテーブルやベンチは(ひっくり返して)重ねて置いています。
Q|可動式ファニチャーの運用面で工夫している点はありますか?
A|基本的に設置したままにしていますが、大雪の際には室内や雪がかからない場所にしまうようにしています。
Q|重さや耐久性など、実際に使って感じた印象を教えてください。
A|普段の移動や運用はしやすいと感じていますが、例えば長期間保管する際は脚部が外せるともっと便利になると思いました。ワンタッチで脚が取り外せたり、たためる構造であればさらに使いやすいですね。スタッキングできれば、収納や運搬がもっと楽になると感じています。
Q|他の自治体にCOMMを勧めるとしたら、どんな点を伝えたいですか?
A|天然木材を使った温かみのあるデザインと、自由にレイアウト変更できる可変性は大きな魅力です。景観になじみ、使う人も運用する側も心地よいと思える製品です。
広場のこれからと、滞在空間づくりの可能性
Q|広場のさらなる活用の構想などはありますか?
A|現状の広場の使われ方には満足しています。当初、同様に可動できる遊具「mopps」の導入も検討しましたが、収納場所の課題があり見送っています。今後も地域のみなさんにとって居心地の良い滞在空間づくりを意識していきたいです。
COMMの導入によって、市役所前の広場は単なる通行空間から、人々が集い、くつろぎ、過ごせる滞在空間へと姿を変えました。実際に設置されたCOMMに座ってお話を伺った日、山形市内は最高気温33度の真夏日でしたが、市役所のピロティは大きな日陰が広がり、通り抜ける風が心地よく、快適に過ごせる空間であることを実感しました。
こうした可能性を秘めた公共空間は、まちなかにまだ数多く残されています。
山形市の「居心地が良く歩きたくなるまちなかづくり」を支える取り組みの一つとして、今後もこの広場や他の空間で、COMMが新たな賑わいや交流を生み出す場となっていくことを期待しています。
