駅前の広場が「居場所」に変わる ──阪神尼崎駅前 中央公園リニューアルプロジェクト インタビュー
2025/06/17 兵庫県尼崎市

写真左から:コトブキ営業担当 耕、株式会社空間創研 多田さま、 阪急阪神不動産株式会社 浦地さま 永田さま
阪神電気鉄道株式会社(以下、阪神電鉄)は2021年、尼崎市とまちづくり協定を締結し、尼崎南部地域の都市再生を目指し賑わいづくりを官民連携で推進してきました。
2023年に阪神電鉄を代表とする共同企業体が阪神尼崎駅周辺公共施設の指定管理者に選定されたことに合わせ、阪神電鉄が管理対象施設のひとつである中央公園の再整備を提案し、尼崎市と「中央公園及び周辺地域のさらなる魅力向上に向けた公園施設設置管理協定」を締結、関西初となる都市公園リノベーション協定制度を活用した中央公園のリニューアル計画がスタートしました。
2023年度に設計を開始、2024年度に工事が行われ、2025年3月にリニューアルオープンを迎えています。
今回は尼崎市及び阪神電鉄とともに計画を推進してきた阪急阪神不動産株式会社 浦地さま、永田さま、設計を担当された株式会社空間創研 多田さまにリニューアルの背景や公園づくりに込めた思い、そしてCOMM選定の理由について伺いました。
市民の声を聞き、安心して過ごせる場所へ
Q|中央公園は、どのような目的や思いを持って整備されたのでしょうか?
浦地さま:リニューアル前の公園には「昼間でも木がうっそうとしていて暗くて怖い」「見通しが悪い」といった課題がありました。そうした課題を受けて、植栽の整理や照明計画の見直しを行い、誰もが安心して過ごせるよう、視認性と開放感のある空間づくりを意識しました。
多田さま:駅前という立地上、動線など空間の骨格はある程度決まっていたのですが、その中でいかに人が「憩える空間」をつくるかが大きなテーマでした。既存樹の存置や伐採の整理を行う中で、地域の方々の思い出が詰まった桜の木などは残し、伐採した木材はスツールとして再活用するなど、思い出や記憶を引き継ぐ工夫も取り入れています。


伐採した木材を再利用したスツール
Q|リニューアルするにあたって課題はありましたか?
浦地さま:駅前という立地上、通勤・通学などで多くの人が行き交う公園だったため、工事中の安全確保と利用者の動線をどう確保するかが大きな課題でした。段階的に仮設動線を切り替え、常に利用しやすいルートを確保しながら工事を進めました。
多様な人が過ごせる「居場所づくり」
Q|計画にあたって、重視したことはなんでしょうか?
多田さま:「居場所づくり」です。静かに過ごせる木立の広場、アクティブに楽しめる芝生広場、その静と動の中間にもいくつかの広場を設けることで、多様な人々が自分のペースで過ごせる「居場所づくり」ができるようにしました。
以前は家族連れや若者の日常利用はあまり見られなかったように思います。公園全体に居場所を作ることで、さまざまな人が心地よく過ごせるようになり、自然なかたちで多様性が広がる空間へを目指しました。

Q|ベンチマークにした公園や広場はありますか?
浦地さま:神戸の東遊園地やGRAND GREEN OSAKA(うめきた公園:阪急阪神不動産さまもパークマネジメントとして参加)、東京に出張に行った際には南池袋公園やIKE•SUNPARKなど、民間が関わる先進事例を視察しました。
永田さま:公園内の過ごし方もできるだけ禁止がないようにしたいという思いがあり、利用を制限するのではなく、自由な使い方を促すようなサインの表現なども参考にしています。
オープン当日、ベンチが居場所をつくった
Q|オープンを迎えて、印象的だったことはありますか?
浦地さま:オープン初日、老若男女問わず多くの方が自然とベンチに座ってくつろぐ様子を見て、「居場所をつくることができた」という実感がありました。
工事中の無人の風景から一転して、多様な人の賑わいが生まれた瞬間は、私たちにとってもとても印象深く、忘れられない光景になりました。
多田さま:この公園の目玉となっているデッキエリアに設置したCOMMのハイスツールは「高齢の方には使いにくいのではないか?」という議論があったんですが、いざオープンしてみるとみなさん楽しんで使っていたので安心しました。

COMM(ファニチャー)の選定理由
Q|広場のファニチャーとして「COMM」を選ばれた理由を教えてください。
多田さま:COMMはバリエーションが豊富で、テーブルやスツールなど多様な形状が揃っています。
利用者が思い思いの場所で、自分らしい過ごし方ができる点に魅力を感じました。柔軟な使い方ができる点が、COMMを選んだ決め手となりました。

Q|自由に動かせるファニチャーの導入に、不安はありませんでしたか?
浦地さま:検討時には「持ち去り」や「管理の難しさ」などの懸念もあり、反対意見もありました。
ただ、夜間に施錠するなど運用面で工夫を加えることで課題をクリアしました。プロジェクトに関わる全員が「誰もが自由に使える公園にしたい」という共通の思いがあったからこそ、実現できた選定だと感じています
多田さま:「ファニチャーを自由に動かせること」が実現できたのがいちばんうれしかったです。
Q|素材選びで重視されたポイントはありますか?
多田さま:COMM選定の際には「天然木材で良いのか?」という議論がありました。COMMは手頃な価格でデザイン性も高く、種類が豊富なのが魅力です。
今回は天然木材を使えたからこそ、この公園にふさわしい雰囲気をつくることができたと感じています。もし天然木材の使用が難しかった場合、この空間のイメージは実現できなかったかもしれません。
Q|COMMをどのようなシーンで活用してほしいと考えていますか?
多田さま:ひとりでもグループでも憩える場所として使ってほしいです。静のエリアだったらひとりで本を読んだり休んだり、ここ(静と動の間の空間)だったら、家族連れやグループで飲食したりして楽しんでもらったり。
デッキの部分は待ち合わせにも使ってほしいですね。尼崎ののびのびとした空気感とともに、自由に使っていただけるとうれしいです。

これからの中央公園
Q|今後、この公園をどのように育てていきたいですか?
永田さま:日常でもイベントでも、人々が集い、時間を過ごしたくなる公園として育てていきたいと考えています。
公園内にOPENしたカフェなど周辺施設とも連携し、地域全体の魅力や賑わいを高める存在になれればと思っています。
COMMが叶える、みんなの居場所づくり
この公園が目指したのは、誰もが気兼ねなく過ごせる「まちなかの居場所」。
地域の声に耳を傾けながら、丁寧につくられたこの空間は、今後も訪れる人々の日常に寄り添いながら、育っていく場所になるはずです。
「居場所づくり」の要として選ばれたCOMMは、豊富な形状と自由なレイアウトが可能な点が最大の魅力です。
多様な人が行き交う駅前の公園だからこそ、COMMの柔軟性が生きる場面がたくさんありました。
実際に、さまざまな形のCOMMを使って思い思いに過ごしている方々の姿を見て、この空間が"居場所"として機能していることを、あらためて実感することができました。
※実際の空間の様子を写真でご覧いただける事例記事もあわせてご覧ください。
https://townscape.kotobuki.co.jp/works/place/station-front/post_210
