地域の文化と食を未来へつなぐ、「流山市 白みりんミュージアム」

2025/08/21 千葉県流山市


千葉県流山市、江戸時代からのみりん醸造文化が今なお息づく「流山本町エリア」
その中心に2025年、「流山市 白みりんミュージアム」が開館しました。
地元の食文化や歴史を"見て・触れて・味わう"ことができるこの施設は、地域の新たな回遊拠点として注目を集めています。

館内には、コトブキの可動式ファニチャー「COMM」も導入されています。
ミュージアム設立の背景から、COMM選定の理由を
流山本町・利根運河ツーリズム推進課 課長 白みりんマイスターの山口さまに伺いました。


「白みりんって何?」から始まった、まちの課題と可能性



Q|白みりんミュージアム設立の背景を教えてください。

山口さま:流山本町は、江戸時代に白みりん(現在の本みりん)が誕生したとされる歴史的な地域です。
地域では古民家を活用して白みりんを使った料理やスイーツを提供するお店もありますが、
これまで、「白みりんとは何か?」「工場見学はできるのか?」といった来訪者の声に十分応えられていない現状がありました。

また、イベントなどの際にも、気軽に購入できる土産品や贈答品が少ないという課題も感じていました。
そこで白みりんをきっかけに、流山本町エリアを楽しんでもらえる、拠点となるような施設をつくろうという計画を立てました。




なるほど!それで、入り口に電動キックボードがあったんですね。

山口さま:はい。流山本町は縦に約2キロのエリアですが、お店や施設が点在しており、人によっては徒歩での移動に少し距離を感じることもあります。そこで、訪れた方が気軽に地域を回遊できるよう、キックボードを二次交通の手段として導入しました。

もともとはこの本町エリア内での利用を想定していましたが、現在では「おおたかの森」や「南流山」など周辺エリアまで移動できるようになっており、流山本町とまち全体をつなぐ便利な移動手段として活用されています。



Q|空間全体に込めたコンセプトやテーマを教えてください。

山口さま:館内の設計には、かつての造り酒屋や仕込み蔵の雰囲気を重ね合わせています。木材を多く使用し、温もりのある空間に仕上げました。
また、流山本町のまちなみには、黒漆喰や本瓦といった伝統的な建築様式が多く見られます。そうした地域の風景に馴染むよう、外観や色使いにも配慮を重ねました。

一方で、大きなガラス面を設けることで中の様子が見えるようにし、まちに開かれた近代的な印象もプラスしました。
過去の文化や歴史を尊重しながら、未来へとつなげていく。そんな想いを込めた空間づくりを目指しました。




子どもも、大人も。五感で学ぶ食文化の体験空間



Q|どんな方が訪れていますか?

山口さま:流山市は子育て世代の移住が増えているエリアということもあり、休日はミュージアムにもご家族連れでの来館が多く見られます。
来場者の多くは、料理に関心を持つ子育て世代と想定していて、お子さまも楽しめる要素を取り入れながら、普段料理をする方にとっても発見のある展示を目指しました。



Q|展示について工夫された点があれば教えてください!

山口さま:場内の展示には五感を使った工夫を凝らしており、「見る」だけではなく、実際に「触れる」「香りを嗅ぐ」といった体験ができるようになっています。
自分で映像をスタートさせたり、実際にみりんを仕込む工程の大桶を混ぜる、攪拌体験をデジタルで再現したりと、
流山市博物館とはひと味違う"体験型"の仕掛けを散りばめています。





みりんができるまでの過程を動画で学べるコーナーや、キッチンスタジオでの調理体験も用意しています。
煮物や照り焼きといった定番以外にも、みりんのさまざまな使い方を知っていただける機会を提供しています。

「今日の料理に使うみりんは、このまちで生まれたんだ」と感じていただけたらうれしいですね。
実際に、お子さんが「みりん買って帰ろう!」と話している様子を見かけることもあり、地域と食のつながりを実感しています。



自然な導線と自由なレイアウト。「COMM」が支える回遊の場



Q|COMMをどこで知りましたか?

山口さま:施設の空間設計を進めるなかで、設計者からCOMMの提案を受けました。
当初から、ここをただ展示を見る場所にとどめず、来館者が休憩したり、軽食を楽しんだりできるような場所にしたいと考えていたため、ファニチャー選びも重要なポイントでした。
もともと、公園を管理している課に在籍していたこともあり、コトブキの製品は以前から知っていたんです。



Q|COMMを選んだ決め手・魅力に感じた点は?

山口さま:COMMを選んだ一番の理由は、屋外でも屋内でも違和感なく使えること。
デザイン面も木材と鋳物の組み合わせが、ミュージアムの空間によく馴染むと思いました。

また、モジュール式で自由度が高く、来館者の動線やイベントに応じて、レイアウトを柔軟に変えられる点にも魅力を感じました。現在は「ヘキサベンチ」を六角形に組んだ形で使っています。

ミュージアムの運営において、オープン当初は「この空間をどのように使っていくか」がまだ完全には固まっていませんでした。そうした段階でCOMMを選んだのは、「動かせる」という安心感があったからです。





Q|屋外の製品を屋内で使用したのはなぜでしょうか?

山口さま:売店の飲み物やソフトクリームなどを楽しむ来館者のことを想定していたので、
万が一こぼれても拭き取りやすく、気兼ねなく使えるという点で屋外のファニチャーは安心できると考えました。



Q|可動式のCOMMでよかったことはありますか?

山口さま:施設の使い方に応じて自在に動かせる点です。
たとえば、屋外にベンチを増やしたいとなった場合でも、館内で使用しているヘキサベンチをそのまま外へ持ち出すことができます。
ミュージアム前の広場でイベントを開催する際には、お客様に座っていただくためにCOMMを移動させて活用することも想定しています。
場の使い方や来館者の動きに応じてレイアウトを変えられる柔軟性は、これから長く施設を育てていくうえでも大きなメリットだと感じています。





展示にとどまらない、地域とつながる施設へ



Q|今後の展望を聞かせてください!

山口さま:ミュージアムはオープンしたばかりですが、展示を見るだけでは何度も足を運んでもらうのは難しいと感じています。
だからこそ今後は、お土産の充実や、キッチンスタジオを活用した料理教室など、体験型のイベントを増やしていきたいと考えています。

最近は、地域の方々をお招きして夏祭りを開催するなど、地元とのつながりを大切にしたイベントも開催しました。地域に愛される場としても、ミュージアムを育てていきたいという想いがあります。

さらに、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の千葉県ブースに参加する機会を得られたので、「発酵」や「醸造」をテーマに白みりんが流山で生まれたこと、そして今もなお、この地で大切に作られ続けていることを、広く伝えていきたいと考えています。





地域の文化や歴史を次の世代へとつなげていく



白みりんミュージアムは、流山の地域資源を、五感で感じ学べる施設として生まれました。
単なる展示施設ではなく、来るたびに新しい発見があり、人と人、人とまち、そして過去と未来がつながる"体験の拠点"です。

そんな新たなまちの拠点を支えているのが、空間に馴染み自由にかたちを変えられるCOMM。
座る、集う、楽しむ、そのすべての瞬間を静かに支えます。

白みりんからはじまる流山の物語。
その一滴に込められた時間を、ぜひ体験しに来てください。

※実際の空間の様子を写真でご覧いただける事例記事もあわせてご覧ください。
https://townscape.kotobuki.co.jp/works/place/public/post_211













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