歴史とにぎわいが共存する、新たなまちの居場所「こまき山イーストパーク」

2025/08/07 愛知県小牧市


小牧市中心部に誕生した「こまき山イーストパーク」
旧中央図書館跡地という立地を生かし、「歴史を感じ、くつろぎとにぎわいが共存する新たなみんなの居場所」というコンセプトのもとに整備された公園です。

今回は、公園整備に携わられた蔦井株式会社 環境事業部 環境部 部長代理 上さま、岡部さま
株式会社スペース クリエイティブ事業部 企画開発部 部長 シニアディレクター祖田さま、國松さまにお話を伺いました。



(写真左手前より、岡部さま、上さま、祖田さま、國松さま)


中心市街地の魅力を未来へ



小牧市では令和4年3月、「小牧市中心市街地グランドデザイン」を策定。 小牧駅周辺に整備されたこまきこども未来館や小牧市中央図書館などから小牧山へ、人々が歩いて楽しめるまちなかを目指してきました。

令和3年3月に閉館した中央図書館の跡地活用を検討する中で、飲食店の出店など民間活力を導入した公園整備案が浮上。
市にとって象徴的な存在である小牧山と小牧城を望むこの場所を「小牧山東公園(こまき山イーストパーク)」として整備することが決まりました。


『ここまき山』に込めた思い


Q|「歴史を感じ、くつろぎとにぎわいが共存する新たなみんなの居場所」というコンセプトに込めた思いをお聞かせください。

國松さま| 小牧市や市民のみなさんの思いを踏まえて、小牧山のふもとに位置する場所の魅力を活かし、誰もが気軽に立ち寄れるシンボル的な場所になればと考えました。

『ここまき山』は、その象徴です。
小牧山の"子ども"である『ここまき山』をシンボリックな存在としてつくることで公園の真ん中につくり、
小牧山に向かう途中にふらっと立ち寄れる、自然と人が集まってにぎわいが生まれる新たな居場所にしたい、そんな思いを込めています。

(公園中央にあるここまき山)


柵のない、ひらかれた公園設計


Q|くつろぎとにぎわいを生むために、どのような工夫をされたのでしょうか?

祖田さま| 一つは、公園前面にある「シンボルロード」(小牧駅周辺から小牧山へと続く道)に歩道を少し延ばしたことです。一般的な公園のように柵で囲うのではなく、歩道からゆるやかに公園へとつながる設計にしました。

上さま|
国土交通省が推奨している「ウォーカブル」という考え方を取り入れています。
公園とシンボルロードの歩道をシームレスにつなげ、あえて"入り口"を明確にしないことで、誰もがふらっと立ち寄れる空間になるよう工夫しました。


(中央線より左側が公園、右側が歩道。奥に見えるのは小牧山と頂上には小牧城)


思いがけない世代の利用も


Q|実際に公園を訪れるのは、どんな方々が多いのでしょうか?

上さま| 本当に幅広い世代の方に来ていただいています。親子連れやお孫さんと一緒のおじいちゃん・おばあちゃんはもちろん、中学生や高校生の姿もよく見かけます。公園内はゾーニングをしていますが、訪れた人が好きな場所を自由に選んで過ごせるように配慮しているんです

コトブキ|
中学生や高校生まで来ているのは、少し意外ですね!

上さま|
ええ、私たちも少し驚きました。夕方になると大屋根の下のテーブルセットでおしゃべりをしたり、
荷物を置いて『ここまき山』に登ったり、うんていで遊んだりする姿が見られます。
意外とまちなかで気兼ねなくくつろげる場所が少なかったのかもしれません。『ここまき山』の石段に座ったり、芝生に寝転んだりする姿も見られて、まさに「みんなの居場所」というコンセプト通りに活用されているのを感じています。




多世代が自由に過ごせる場所



Q|公園で過ごす人たちに、どのような過ごし方をしてほしいと考えていましたか?

岡部さま| 多世代の方に親しまれる公園にしたい、という思いがありました。『ここまき山』を中心に、小さな子ども達が駆け回る姿をイメージしていたんですが、実際にオープンしてみると、中学生や高校生、お年寄りの方まで、本当に幅広い世代がそれぞれのペースで過ごしてくれているんです。それがとてもうれしいですね。

大屋根の下や芝生広場では、星乃珈琲店のテイクアウトを楽しむ方もいれば、健康遊具や幼児用遊具で遊ぶ子ども達の姿も見られます。自由に、思い思いの過ごし方をしていただける公園であればいいなと思っています。

Q| 開園後、来訪者の反応はどうでしたか?

岡部さま| 子ども達には『ここまき山』のスライダーがとても人気で、何度も繰り返し滑って遊んでいます。
親御さんにとっても、すぐそばの大屋根の下から見守れるので安心感があるようです。

祖田さま| スライダーは、子どもが「すべって下りる」ことで『ここまき山』での遊びがひと区切りつく、
大事な仕掛けなんです。山を登って、頂上でちょっとワクワクして、最後にすべって下りる。
その流れが子ども達にとってとても楽しい体験になっています。




Q|実際の利用で印象的だったエピソードはありますか?

岡部さま| 近所の幼稚園のお散歩コースになっていて、子ども達が楽しそうに『ここまき山』を登り、小牧山のお城を眺めてから降りてくる姿がとてもかわいらしく印象的でした。

スライダーは6歳〜12歳向けなので、今はまだ遊べない子もいますが、「数年後には滑れるようになるんだな」と思うと、その成長とともにまた訪れてくれるのが楽しみです。いつか大きくなった子が、自分の子どもを連れて来てくれる日を想像すると感慨深いですね。

國松さま| 工事中から前を通る子ども達が「まだかな、まだかな」と楽しみにしてくれていました。開園と同時に多くの方が訪れてくれて、新しい公園なのに、まるで昔からここにあったかのような自然な雰囲気で使ってもらえているのが、とても印象的でした。


夏の猛暑でも快適に過ごせる大屋根の工夫





Q|大屋根について教えてください。

上さま| 小牧市から「屋根がほしい」という要望をいただいていました。特に最近は夏の猛暑が厳しいので、日差しを避けられる場所、いわば"避暑地"のような空間をつくりたいと考えたんです。どうすれば暑い日でも公園に来て、安心してゆっくり過ごしていただけるかをずっと意識していました。

設計の際、spaceさんが屋根の形を『ここまき山』に沿わせてデザインしてくださったので、
大きな屋根でありながら公園全体の雰囲気にも自然に馴染んでいると思います。

コトブキ|他の公園ではなかなか見られない規模感で、とても魅力的だと感じました!

上さま| 一般的に公園にある四阿(あずまや)はスペースが限られていて、誰かが使っていると他の人は入りにくいんですよね。だからこそ、大勢の方が同時にくつろげる「大屋根」が必要だと思いました。
世代や用途を問わず、みんなが安心して腰を下ろせる場所になったのではないでしょうか。



製品の使い分けとデザインへのこだわり



Q|こまき山イーストパークにはさまざまなコトブキ製品が設置されています。 例えば星乃珈琲店の横には背もたれが高くてゆったりくつろげるCOMMのハイバックベンチがありますが、どのように製品を使い分けているのでしょうか?




祖田さま| シンボルロード沿いのベンチについては、「気軽に立ち寄ってほしい」という思いを大切にしました。
そこで、"いかにも公園のベンチ"という形ではなく、通りを歩く人がふらっと腰掛けられるようなデザイン性の高いものを探していたんです。

TRAXシリーズは組み合わせの自由度が高く、シーンに合わせてレイアウトできるのが魅力的で気に入っています。

TRUNK benchはあえて固定していません。もちろん簡単には動かせませんが、公園は「竣工して終わり」ではなく、
これから利用される中で変わっていく場所。経年の中で利用状況に合わせて少しずつ配置を配置を変えていってもらえればいいなと考えています。

COMMのハイバックベンチは、星乃珈琲店の横という落ち着いた雰囲気のエリアに配置することで、買ったドリンクを片手に長く座ってくつろげるようにしました。場所ごとに役割を分けながら、過ごし方に合う製品を選んでいます。




コトブキ|かまどベンチは小牧市からのリクエストだったのでしょうか?
祖田さま|小牧市からはソーラー照明を設置してほしいという要望がありました。せっかく設置するなら、地域の防災にも役立つものにしたいと提案時から考えていました。

上さま|公園は一時的な避難場所になることが想定されます。大災害が起きた際には必ず必要になる設備なので、設置後には市役所の役員の方々と一緒に、どのように活用するかシミュレーションも行いました。




公園に調和するコトブキ製品


Q|率直になぜコトブキ製品を選ばれたのでしょうか?

上さま|信頼と実績が何よりの理由です(笑)
祖田さま|屋外の公共空間に置くものとして、コトブキ製品は安心感がありました。
今回の選定中にカタログを見ている中で偶然TRAXシリーズを見つけて、「これはぜひ使ってみたい!」と思ったんです。

Q|製品に対して要望はありますか?

祖田さま|TRUNK benchの材質を地元の木材に変えられるといいですね。

上さま|それと、TRUNK benchの端部の処理も検討してほしいです。組み合わせたときに端が歩行者に鋭角に向いてしまう部分が少し気になったので、設置方法を少し変えました。

デザインだけでなく、使う人の安全や快適さも考えた細やかな配慮が今後さらに進むとうれしいですね。




地域に根付く憩いの場を目指して


Q|今後、公園が地域にとってどのような存在になってほしいですか?

岡部さま|地域に根付いた公園になってほしいですね。地域の皆さんにとっての憩いの場であり、いろいろな使い方ができる多目的な場所として育っていけばと思います。
何かしたいと思ったときに、まずは「こまき山イーストパーク」と自然に思い浮かべてもらえる、そんな存在になればうれしいです。

Q|地域イベントやコミュニティ活動との連携についてはどのような展望がありますか?

岡部さま|現在は月に一度、自主事業としてビアガーデンや七夕など、みんなが気軽に集まれるイベントを企画しています。
将来的には地域の方々から利用やイベント企画の声を集め、公園をもっと活用してもらえるようにしていきたいと考えています。




多世代交流の拠点として未来へつながる公園に


こまき山イーストパークは、歴史的なまちなかの風景と調和しながら、多世代が自然に集い、交流できる場所です。

あえて柵を設けず、歩道と公園がゆるやかにつながる設計にすることで、まちなかの一部として気軽に立ち寄れる開かれた空間となっています。 子どもからお年寄りまで世代を超えたつながりが生まれ、地域の皆さんの日常に溶け込み、自然と集まる「みんなの居場所」として愛されています。

訪れるすべての人が心地よい時間を過ごし、何度でも足を運びたくなる、そんな温かい場所です。

こうした場づくりに、コトブキの製品が少しでも役立っていることをとてもうれしく思います。これからも地域の皆さんに憩いの時間を提供できる一部として、公園とともに歩んでいきたいと考えています。


※実際の空間の様子を写真でご覧いただける事例記事もあわせてご覧ください。
https://townscape.kotobuki.co.jp/works/post_212













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