遊具の数がつくる、公園の記憶

遊具の数がつくる、公園の記憶


辰巳の森緑道公園とキンキン広場。

このふたつの公園には、同じパンダの遊具が設置されています。



ひとつは12台、もうひとつは1台。

数だけを見ると大きな違いがありますが、実際に訪れてみると、

不思議なことにどちらも強く印象に残るのです。



なぜなのでしょうか。


辰巳の森緑道公園

辰巳の森緑道公園

12台のパンダがつくる"風景"12台のパンダがつくる"風景"

辰巳の森緑道公園では、12台のパンダの遊具が一定の間隔で配置されています。

視界に入るのは、1つの遊具というより、

繰り返される配置のリズムによって生まれる公園全体の風景です。



実はこの配置は、当初から決まっていたわけではありません。



検討段階では、1台のパンダを複数のパンダが囲う構成も想定されていました。

しかし、「どう見えるか」「どう受け取られるか」といった視点も含めて議論が重ねられ、

最終的には、12台がフラットに並ぶ現在の配置に落ち着きました。



結果として生まれたのは、

特定の遊具に視線や遊びが集中するのではなく、広場全体に遊びが広がる構成です。



子どもたちは一か所に集まるのではなく、

歩き、走り、移動しながら遊びを展開していきます。



12台という数は、遊具を増やすだけの選択ではなく、

公園全体を使わせるための設計として機能しています。


キンキン広場

キンキン広場

1台のパンダがつくる"象徴"1台のパンダがつくる"象徴"

一方、キンキン広場に設置されたパンダは1台だけです。



この場所はもともと暫定的な利用がされていた土地でしたが、

社会実験としてファニチャーが設置されていた経緯がありました。



実験期間終了後、ファニチャーが撤去され空き地になる可能性もありましたが、

安全性や敷地条件を踏まえ、遊びの要素として選ばれたのが、1台のパンダでした。

周囲に遊具はなく、その存在は自然と視線を集めます。



「あのパンダのある広場」



そんなふうに語られるように、遊具は広場の象徴的な存在となり、

SNSなどでも話題になりました。



数を抑えたからこそ、1台の遊具に役割が与えられ、

空間の記憶と強く結びついていったように見えます。

なぜ、12も1も記憶に残るのか
なぜ、12も1も記憶に残るのか

12台のパンダは、 「多すぎる」ことで風景として記憶に残ります。

1台のパンダは、 「少なすぎる」ことで意味を持ち、記憶に残ります。



どちらの公園・広場も、子どもが遊ぶための場所であると同時に、

人の記憶や会話に残る「話題」を内包しています。



多くのパンダが並ぶ風景も、1台だけ置かれたパンダの存在も、

人の視線を引き、記憶に残り、語られるきっかけをつくりました。



遊具は、遊ばれることで価値を持ち、

語られ、記憶に残ることで、さらに場の輪郭を強めていく。



そんな側面も、公共空間には必要なのだと気付かされました。

辰巳の森緑道公園

数は、空間デザインの意思
数は、空間デザインの意思

記憶に残る理由は異なりますが、

どちらにも共通しているのは、数に明確な意図があることです。



遊具は、形やデザインだけでなく、何台置くか、

どう配置するかによって、その役割を大きく変えます。



それは、

空間を面として使わせたいのか。

一点に人を集めたいのか。

風景をつくりたいのか。

象徴をつくりたいのか。



その場所で生まれてほしい過ごし方を表す選択でもあります。



12台で風景をつくる。

1台で象徴をつくる。

同じ遊具でも、置き方によって、公園の表情は大きく変わります。

コトブキが大切にしていること
コトブキが大切にしていること

私たちは、オープンスペースに「何を置くか」を考える前に、

その場所で、どんな時間が流れてほしいかを考えます。



人が自然と集まる場所なのか。

歩きながら偶然出会う場所なのか。

長く滞在するのか、ふと立ち寄るのか。



その答えによって、

1台がふさわしいこともあれば、12台がその場を形づくることもあります。



数は結果であり、目的ではありません。

過ごし方を描いた先に、適切な数がある。

それが、私たちが公共空間と向き合うときの基本姿勢です。


キンキン広場

おわりに
おわりに

遊具は「何を置くか」だけでなく、

「どう置くか」「いくつ置くか」まで含めて、空間をかたちづくります。



辰巳の森緑道公園とキンキン広場。



ふたつのパンダのあり方は、数そのものではなく、

数に込められた設計の意思が、公園の記憶をつくっていることを教えてくれます。


記事作成:マーケティング本部 藤嶋



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