サイエンスを遊びに 「テンセジャングル」製品開発ストーリー


2024年にコトブキがリリースした「PlayCode」

登る・走るといった動きを組み合わせ、子どもたちの挑戦心を引き出します。

>>PlayCodeの製品開発ストーリーはこちら

PlayCodeは、いくつものアイテムから構成されています。

その中でも、「テンセジャングル」は少し特別な存在です。

この遊具は、PlayCodeという構想が生まれるよりも前に、

"構造そのものが遊びになる可能性"を探る試みとして動き始めました。

サイエンス、建築、アート。そうした分野で扱われてきた考え方を、

子どもたちの遊びへとつなげていく挑戦です。

なぜ、この構造に挑んだのか。

なぜ、PlayCodeの一部として世に出すことを選んだのか。

そして、なぜ時間をかけて検証を重ねる必要があったのか。

その答えを、開発者へのインタビューから紐解いていきます。

柱が浮いてる?サイエンスの発想から生まれた遊具

Q|この製品開発は、どんなきっかけから始まったのでしょうか。


上野山|
このプロジェクトが動き始めたのは、実はPlayCodeよりも前なんです。

PlayCodeの開発にもつながる話なんですが、当時の公園遊具って、中央に塔があって、
すべり台でぐるっと一周して降りてくるような、様式化されたものが多かったんですよね。
どんな遊びなのか?何を楽しむ遊具なのか?といった、
"遊びそのもののコンセプト"が少し弱くなってきているんじゃないか、と感じていました。
どちらかというと、小学校の体育遊びの延長のような、体力づくりを目的にした運動的な遊びが中心で、
自分から試したくなるような挑戦的な遊びはあまり多くなかった印象です。

そうした問題意識から、アスレチック・サイエンス・インクルーシブという3つのコンセプトを立て、
いくつかの方向性を同時に検討し始めました。

その中で、このアイテムにつながっていくきっかけになったのが、
「サイエンス要素を、もっと"普通の公園"に持ち込めないだろうか」という視点でした。

以前は、子ども科学館や児童館に、遊びながら学べる「科学遊具」がたくさんありました。

テンセジャングル

海外の科学遊具


上野山|
仕組みのある遊びって、

「なんで音が聞こえるんだろう?」
「こっちに立つと、どうなるんだろう?」

といった問いが自然と生まれて、そこから会話が広がっていくんです。

ただ身体を動かすだけじゃなくて、考えたり、話したりする時間が生まれる。
そこに、サイエンス要素を取り入れた遊びの面白さがあるな、と感じていました。

たとえば、学研の『科学と学習』の付録なんかも、「なぜだろう?」とか「やってみたい」という気持ちを
きっかけに、子どもたちが自然とサイエンスに親しんでいく体験だったと思うんです。

ああいう体験を、特別な教材や施設じゃなくて、もっと日常的な場所、公園の中でできないだろうか。
そう考えたことが、この開発の出発点でした。

構造が、そのまま遊びになる


山浦 |
サイエンス要素として注目したのは、"テンセグリティ構造"です。

テンセグリティ(Tensegrity)は、1950年代にバックミンスター・フラーによって命名された、風変わりな構造です。
一言でいうと、「引っぱる力」と「支える力」がバランスを取り合って成立する構造。

私たちが普段目にする建物や遊具って、柱が下から支えて、その上に梁がのるような、
「押す力(圧縮)」を中心に成り立っていますよね。
でも、テンセグリティ構造の場合は、ロープやワイヤーが互いに引っぱり合っていて、
棒や柱同士は直接つながっていないんです。それでも全体としては、きちんと安定している。

その結果、一見すると宙に浮いているように見えるんです。


テンセグリティ構造


上野山|
この、"なぜか支え合って立っている不思議さ"を、
遊びとして体験できたら、きっと面白いんじゃないかと考えました。

テンセグリティ構造は、ひとつが揺れると、別の場所も揺れるんです。
力が全体に伝わって、共振して、干渉し合う。
その予測できない動きそのものが、遊びになるんじゃないか、と発想を広げていきました。

そうして生まれたのが、「テンセジャングル」です。

名前は、「テンセグリティ」と「ジャングルジム」を掛け合わせたものです。
テンセグリティ構造の不思議さを、ジャングルジムのように身体を使って遊べる遊具として直感的に伝えたい。
そんな思いを込めました。

テンセジャングルは、人の目を引き、触れることで遊びが生まれる遊具です。

このプロジェクトは、慶應義塾大学SFCの鳴川研究室との共同研究から始まっています。
アートや建築で用いられてきた構造を、「遊び」という全く異なる領域に落とし込む挑戦でした。

PlayCodeをより多くの場所へ届ける存在へ

Q|テンセジャングルがPlayCodeと結びつくことになった背景を教えてください。


山浦 |
当初は、PlayCodeとは別で考えていました。ただ、検討を進める中で、
「PlayCodeにもっと動きのある要素が加わったら面白くなるんじゃないか?」という話が出てきたんです。

PlayCodeは、縦方向に登る動きや、走り抜ける遊びを中心に構成されています。
そこに、テンセジャングルのような揺れや連動を伴う遊びが加わることで、遊びの幅がぐっと広がると考えました。

もうひとつ大きかったのは、スケール感です。

テンセジャングルは、比較的コンパクトなスペースでも、存在感のあるアクティブな遊び場をつくることが
できるアイテムです。
場所を選ばずに、アクティブな遊びを比較的手の届きやすい金額で提供できることも、
PlayCodeのアイテムとして展開する大きな理由でした。

前例も、基準もない構造に挑む

Q|アートの構造を遊びという別領域に落とし込むうえで、大変だったことは何ですか?


山浦 |
正直に言うと、安全基準をクリアするのは本当に大変でした。
今まで誰もやったことのない構造なので、前例がないんです。
検証は、他の遊具よりも圧倒的に多く行いました。2〜3年は、この検証に費やしています。

従来の遊具が4本で支えられているのに対し、テンセジャングルは2本で支えています。
共振して同じリズムで揺れ続けると、揺れは次第に大きくなっていきます。
だからこそ、「最大限に揺れても安全か」を徹底的に確かめる必要がありました。

支柱の根元部分の強度を確認するために、約65万回におよぶ共振試験を行っています。
750kgの荷重をかけた状態で機械的に振動を与え続け、ロープが破断しないか、
構造が破綻しないか、を徹底的に検証しました。

テンセジャングル

共振試験の様子


山浦 |
同時に破壊実験も行っています。
支柱が壊れるまで荷重をかけた結果、一気に倒れるのではなく、
支柱が折れ曲がり、ゆっくりと傾いていくことを確認できました。

万が一のときでも、危険な壊れ方をしない。
だからこそ、子どもたちは加減を気にせず、身体いっぱいに揺れを楽しめる。
そこは、とても大切にしたポイントです。

設計で解決した、ロープ固定の難題

Q|こだわりの強い部分はどこですか?


山浦 |
一番苦労したのは、ロープの固定部分です。
見た目では分からない部分ですが、ここにはかなり時間をかけています。

テンセグリティ構造を成立させるためには、ロープに一定の引っ張る力がかかっている状態が必要になります。
ただ、完成後にその張り具合を調整する仕組みにすると、どうしても金物が増えてしまいます。
そうなると安全性への配慮もさらに必要になりますし、結果的にコストも合わなくなってしまう。

そこで考えたのが、施工時に無理な調整をしなくても、ロープが自然とピンと張る
"ちょうどよい長さ"のバランスを探ることでした。

わずかな違いで、全体のバランスが大きく変わります。
その最適解を見つけるために、何度も試作と検証を重ねました。

コストを抑えながら、安全性と遊びの質を両立する。
それが、この部分に込めた一番のこだわりです。

テンセジャングル

構造を引き立てる、色の選択


石田 |
この遊具では「色」も構造を伝えるための重要な要素です。
デザイン性を強調するためではなく、「構造で注意を惹くこと」そして「周囲の環境と調和すること」。
その役割を果たすために、最適な色を選定しています。

テンセジャングルは、PlayCodeのアイテムのひとつです。
そのため、素材感や「森の中」という世界観は、ほかのアイテムと共通しています。

そのうえで、色を決める際に大切にしたのは、
①テンセグリティ構造をしっかりと視覚化すること
②森にある色と調和しながらも、きちんと存在感を放つこと
この2点でした。

テンセジャングルの特徴は、浮いているように見える構造です。
その不思議さを伝えるためには、ロープよりも支柱や梁に自然と視線が集まる必要があります。
そこで、暗い色のロープの中に、明るい梁が浮かび上がるように、ロープには背景に溶け込む黒色を、
梁には白色を採用しました。

ただし、梁の白色は、工業的な真っ白ではありません。
白樺や石灰石のような、自然界に存在するやわらかなオフホワイトです。
森の緑や土の色と十分な明度差を持ちながら、自然になじみすぎず、浮きすぎない。
PlayCodeの他のアイテムと並んだときにも、構造の存在感をきちんと示せる色だと考えました。

テンセジャングル

アートにも、遊び場にもなる存在へ

Q|今後どのような場所に設置が増えてほしいですか?


上野山|
科学館や図書館など、教育施設の近くには、すごく合うと思います。


山浦 |
小学校や科学館ですね。
以前はこうした施設に遊具が設置される事例も多かったので、
また増えていくといいなと思っています。


石田 |
オブジェとしても成立する構造なので美術館でもいいと思っています。
広場にあったら「何だろう?」って、きっと目を引くはずです。

テンセジャングル

不思議さが、遊びの入口になる

PlayCodeは、子どもたちの「やってみたい」を引き出す、遊びの集合体。

その中でテンセジャングルは、人の目を引き、触れることで遊びが生まれる遊具です。

ふわふわと上下に揺れる、これまでに経験したことのない感覚。

遊具でありながら、オブジェのような佇まいも魅力です。

反発力のある構造は、手を離しても細かな揺れが続きます。

「あれ、なんだろう?」

その小さな違和感が、遊びの入口になります。

浮いているような構造を見て、登りながら揺れを感じる中で、

「なぜ?」が生まれ、自然とことばが交わされていきます。

テンセジャングルは、不思議な感覚をきっかけに、体験と会話を生み出す唯一無二の存在です。


記事作成:マーケティング本部 志村



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